ブラックパンサー

 

ブラックパンサーを観た。

食わず嫌いしてたマーベル作品を観るきっかけになった、マーティン・フリーマン演じるエヴェレット・ロス捜査官が登場すると聞いていたので、それはもう期待度大で観た。

感想。悪くなかった。おもしろかった。

ただ、個人的には手放しで最高と言える作品でもなかった。

以下ネタバレありの感想です。

 

 

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映像と音楽と衣装はとてもよかった。

前半の韓国でのカーチェイスがおそらく作中で最もアドレナリンが分泌される最高のシーンだと思う。作中で戦闘時に音楽を流させBGMとする演出は最高。(例:スタートレックBEYOND、ガーディアンズオブギャラクシー、蒼穹のファフナーEXODUS1話)

ガジェットも今までにマーベルの映画では見なかった独特さで、音楽や衣装に取り入れられた文化も相まってワカンダの風情をよく表していてとてもよかった。

 

王の親衛隊がすべて女性で構成されており、そのことに対する理由づけや説明が一切作中ではなかったのも好ポイントだった。

ラストの陛下のスピーチで「愚者は壁を作る」と例えられたボーダー族がすべて男性で構成されていることとの対比なのかな。

隊長のオコエが非常にかっこよい。

 

キャラクター的には、陛下の妹姫のシュリ、あとジャバリ族の長エムバクが好き。

シュリは賢く、能力のある女性で、ノリが軽く古い慣習をものともしない。 

エムバクはワカンダ王家や多数派の部族と対立する部族の長で、荒々しい男として描かれ陛下と戦うシーンもあるが、実際やってる言動は誠実で超いいやつ。

 

で、で、褒めるシーンもたくさんあるが、褒めたくないシーンもある。恋愛の描写について。これがモヤモヤしている一番の原因だ。

まず、陛下と、スパイとして働くナキアは「元交際相手」という設定である。さらに父王ティ・チャカを弔うためワカンダに一時帰国したナキアに、陛下は冗談交じりに「国に残ってくれないか」と言うが、ナキアは「諸外国では難民が日々苦しんでおり、世界を知ってしまった自分は、彼らのために出来ることをしたい」的な言葉できっぱり断る。

ここまではよかったです。

 

その後、なんやかんやあり陛下が死んだと思われ、「世界の弱者にワカンダの武力を分け与え救う」という思想を持ったキルモンガーが即位したとき、ナキアは新王には付き従わず離反する道を選ぶが、そこで語られる離反の理由は「ティ・チャラを愛していたから」のみである。

ちょっと待って?と思った。

そこは、前半でせっかく同じ弱者の問題に触れ、自らの理念と愛情とを比べたときに理念を取ったナキアというキャラクターなんだから、せめて一言でも、新王との思想の相入れなさを語らせた方がいいんじゃないの?同じ弱者を憂う視点を持っていても新王の取る手段には賛成できないとかさ。

 

さらにウワッと思ったのが、事件の解決後、陛下がナキアにかけた言葉である。「国に残ってくれ」。

まだその話する!!??

ワカンダが今まで虐げられる弱者に対して傍観の立場を取り続けた結果の極みが今回の事件なのに、その弱者を救いたいと国を出ることを望むナキアにまだその話する??

結局キスをしてうやむやのままラストへ。

その後の国連でのスピーチでかろうじて陛下への好感度が地に落ちず済んだが、モヤモヤモヤモヤとしたものが胸に残った。

作中、オコエがボーダー族の長であり恋人でもあるウカビに兵を引かせるが、その行動原理やウカビが兵を引いた理由は「恋愛感情」として描かれないので、ますますやればできるのに…という気持ちが残る。

 

国際社会から孤立しているワカンダの、さらに国内で孤立し続けたジャバリ族に対するナキアや陛下の要求も、ちょっと求めすぎじゃない?という感じである。

その資源や技術力を隠してきたから国際社会から求められることがなかったとはいえ、世界で実際に起こっている危機に、傍観を決め込んでいたワカンダが。自らの危機には、かつて王に従わなかったことを理由に、王座への挑戦権も剥奪して腫れ物扱いしてきたジャバリ族に全面的な協力を求めるのは、ちょっと求めすぎじゃないか。

エムバクが誠実でいいやつだったから陛下の命が助かり、危機も乗り越えることができた。もっとジャバリ族に対してちゃんとしなさい。

 

マーベルは全部「父と子の物語」なんだな。

アイアンマンも、マイティ・ソーも、アントマンも、ガーディアンズオブギャラクシーも、ブラックパンサーも、いつも母親は蚊帳の外。

そしてだいたいの父が何らかの事件の原因になっているので、 マーベルの父親にはろくなやつがいねぇなという印象ばかりが目立つ。

ブラックパンサーも、結局は父王ティ・チャカが誠実さを欠いたことが原因で、それを責めつつ陛下もなんだかんだやってることは父親と同じである。キルモンガーに子どもがいたらどうするの?

マーベル映画でいい父親してるのはバートンくらいでは?

 

文句ばかりになってしまった。

以上のモヤモヤが理由で手放しで最高とはいえないが、音楽や映像やアクションはさすがマーベル映画という出来だし、エンターテイメントとしてはものすごくちゃんとしている。

ただ私の期待値が大きすぎただけで。スパイダーマンホームカミングが一点の曇りもなく褒めるところしかない最高の映画だったので。

恋愛の取り扱いに納得がいかないので文句は言うが、韓国でのカーチェイスとシュリのラボのシーン全般はほんとうに最高だったしめちゃくちゃおもしろかった、キャストや製作者がアフリカ系の女性で固められたというのもすごく意味があるしたくさんの人に勇気を与えるすばらしい画期的なことだと思う。

期待値を大幅に上回ってくれたのは推しの扱いで、ちゃんとしているし、見せ場があるし、かっこいいし、おまけにカワイイ。マーティン・フリーマンは世界一カワイイ46歳。

 ちなみにマーティン・フリーマンはロスの役どころについてこういう(マーベル『ブラックパンサー』エヴェレット・ロス、善人でも悪人でもない「グレー」の魅力 ― 「コミックのように演じたくはなかった」 | THE RIVER)解釈を語っていて、ここを頭に入れてから映画を見るとロスという人間により説得力がでる。

 

インフィニティ・ウォー怖いな~